24.部活に鍛えられる~その2~ [中学生時代]
県大会への出場権を賭けた中学生男子バレーボール東播大会は、冷え切った体育館に響き渡るホイッスルを合図に、その第1試合が始まろうとしていました。
今にも吐きそうな青い顔で車の後部座席に座っていたレギュラーの面々も、コートに入れば凛然たる姿を見せて、心身ともにバランスよく鍛えられた者の落ち着きと強さが伝わってきます。
鋭角のスパイクを繰り出すアタッカー、敵のスパイクにくらいつくリベロ、的確な位置にトスを上げるセッター、そして6人のチームワーク。
「うまい!」としか言いようのない試合に、私はしばし真冬の寒さも忘れて惜しみない声援を送りました。
しかし、ふとコート脇のベンチに目をやると、そこには短パンからむき出しの脚をガチガチ震わせながら、スコア帳を手に試合を見守る補欠の集団。
部活保護者会の席で、
「レギュラーの子と補欠の子とで、次第に顔つきに差が出てきてしまった」
という補欠家族としての心情を吐露したところ、
「その子にはその子の役割がある。試合に出るばかりが部員じゃない」
と顧問の先生がおっしゃったのはいつのことだったか…。
当時からまたさらにレギュラーたちはたくましく成長して輝くばかりの威厳を備え、練習の時ですらいまだ球拾いの補欠たちは、まるで彼らの影のようです。
監督がタイムをとれば、レギュラーと一緒に集合してともに檄を拝聴し、ともに「ありがとうございました!」と頭を下げ、コートに戻るレギュラーを送り出すと、自分はまたベンチを暖める脇役に徹するのです。
息子よ、君は悔しくないか!
そう心の中で叫びながら、私は遠い昔、自分の小学校時代を思い出していました。
当時女子の間ではバレーボールが大流行し、放課後はよく他校のチームと試合をしたものです。
私は生まれつきの運動音痴で、バレーボールにしてもまたしかり。9人制であれば出してもらえるが、6人制だと補欠、という微妙な位置にいました。
キャプテンは口八丁手八丁の女子。9人制か6人制かの判断は、彼女の気まぐれにかかっています。下手でもやはり試合に出たい私は、何とか9人制にしてほしいとそのたび彼女の顔色を窺ったものですが、勇気を出して9人制を懇願する時に限って無常にも6人制の決定が下されるのは、世の常、女の常。
私は楽しかるべき放課後を、幾度となく球拾いに捧げたのでした。
今の息子がまさにその球拾い人生です。
だが息子よ、君はまだあきらめるな!
と、一人補欠席に向かってエールを送っているうちに、いつの間にか第1試合は我がチームが勝利を収めていました。
そして、レギュラーはレギュラーなりに大変なプレッシャーの中、続く試合にも次々勝ち抜いて、見事県大会への出場権を獲得したのでした。
「よかったね」と声をかけると、レギュラーばかりか補欠の子も満面の笑みで応えます。その同じ笑顔に、監督の方針は間違ってはいなかったらしいと半分納得しつつ、再び子供と荷物を詰め込んだ車は帰途に着き、長い1日は終わりました。
勢いに乗った彼らは、それから1週間後に行われた県大会でも好進撃を続け、ついに近畿大会への切符をも手に入れたのでした。
「試合に出た子もそうでない子も、これは皆で勝ち取った切符だ」
そう監督が言ってくれたかどうかは知りませんが、日の当たらぬ場所でチームのために黙々と働きながら、ふてくされることなく真っ直ぐ生きている補欠たちに、いつの日か幸あれ。
今にも吐きそうな青い顔で車の後部座席に座っていたレギュラーの面々も、コートに入れば凛然たる姿を見せて、心身ともにバランスよく鍛えられた者の落ち着きと強さが伝わってきます。
鋭角のスパイクを繰り出すアタッカー、敵のスパイクにくらいつくリベロ、的確な位置にトスを上げるセッター、そして6人のチームワーク。
「うまい!」としか言いようのない試合に、私はしばし真冬の寒さも忘れて惜しみない声援を送りました。
しかし、ふとコート脇のベンチに目をやると、そこには短パンからむき出しの脚をガチガチ震わせながら、スコア帳を手に試合を見守る補欠の集団。
部活保護者会の席で、
「レギュラーの子と補欠の子とで、次第に顔つきに差が出てきてしまった」
という補欠家族としての心情を吐露したところ、
「その子にはその子の役割がある。試合に出るばかりが部員じゃない」
と顧問の先生がおっしゃったのはいつのことだったか…。
当時からまたさらにレギュラーたちはたくましく成長して輝くばかりの威厳を備え、練習の時ですらいまだ球拾いの補欠たちは、まるで彼らの影のようです。
監督がタイムをとれば、レギュラーと一緒に集合してともに檄を拝聴し、ともに「ありがとうございました!」と頭を下げ、コートに戻るレギュラーを送り出すと、自分はまたベンチを暖める脇役に徹するのです。
息子よ、君は悔しくないか!
そう心の中で叫びながら、私は遠い昔、自分の小学校時代を思い出していました。
当時女子の間ではバレーボールが大流行し、放課後はよく他校のチームと試合をしたものです。
私は生まれつきの運動音痴で、バレーボールにしてもまたしかり。9人制であれば出してもらえるが、6人制だと補欠、という微妙な位置にいました。
キャプテンは口八丁手八丁の女子。9人制か6人制かの判断は、彼女の気まぐれにかかっています。下手でもやはり試合に出たい私は、何とか9人制にしてほしいとそのたび彼女の顔色を窺ったものですが、勇気を出して9人制を懇願する時に限って無常にも6人制の決定が下されるのは、世の常、女の常。
私は楽しかるべき放課後を、幾度となく球拾いに捧げたのでした。
今の息子がまさにその球拾い人生です。
だが息子よ、君はまだあきらめるな!
と、一人補欠席に向かってエールを送っているうちに、いつの間にか第1試合は我がチームが勝利を収めていました。
そして、レギュラーはレギュラーなりに大変なプレッシャーの中、続く試合にも次々勝ち抜いて、見事県大会への出場権を獲得したのでした。
「よかったね」と声をかけると、レギュラーばかりか補欠の子も満面の笑みで応えます。その同じ笑顔に、監督の方針は間違ってはいなかったらしいと半分納得しつつ、再び子供と荷物を詰め込んだ車は帰途に着き、長い1日は終わりました。
勢いに乗った彼らは、それから1週間後に行われた県大会でも好進撃を続け、ついに近畿大会への切符をも手に入れたのでした。
「試合に出た子もそうでない子も、これは皆で勝ち取った切符だ」
そう監督が言ってくれたかどうかは知りませんが、日の当たらぬ場所でチームのために黙々と働きながら、ふてくされることなく真っ直ぐ生きている補欠たちに、いつの日か幸あれ。
2009-05-24 15:17
nice!(0)
コメント(2)
トラックバック(0)
我が家も、娘が小4の頃からバスケットボールをしているので、ずいぶん車出しやら応援やらお茶出し当番やら・・・に借り出されたものです。
娘は幸いにも運動オンチの私には全く似ず、運動神経と身長に恵まれていたせいか、小5から今に至るまで、ずっとチームの中心選手でしたが、それはそれで、(本人には)大変な苦労がありました。。。
しかし、スタメンでも、ベンチでも、チーム全体で戦うことに違いはないと思います。
結果がどうであれ、団体競技のチームに身を置くことは、子供をたくましく成長させてくれる貴重な体験だったと信じています。
Duarteさんの息子さんも、きっと部活から沢山得るものがあり、今のように立派に成長されたのだと思いますよ。
by Goldenwest (2009-05-26 00:10)
☆Goldenwestさん、
ありがとうございます。本当にどの子もみんないい経験したと思います。
補欠でさぞ悔しかろうと思ってたのはどうやら親の方だけで、息子は試合に出られなくてむしろラッキー!と思ってたことが後に発覚するのですが(笑)、それでも途中でやめたりせず、それなりにがんばったんでしょうね。
娘さん、小4から続けてこられたんですね。がんばりましたねえ。
本人やそばにいるお母さんにしかわからないいろいろな事があったろうと思いますが、その経験はこれから生きますね。
by Duarte (2009-05-28 00:07)