23.部活に鍛えられる~その1~ [中学生時代]
息子が中学校へ入学して以来、部活動が生活のすべてに優先し、その影響は家族にも及んでいます。
学校1ハードな男子バレーボール部の活動は、部員の成長とともにコーチの数も増えて、ますます厳しさに磨きがかかってきました。
週末ともなると、公式試合か、あるいは適当な練習相手を求めて各地へ遠征します。
そして厄介なことに、この遠征の送り迎えには部員の父母が交代で車を出さなければなりません。
これまで仕事だ、病気だとさんざん逃げ回ってきた車出しですが、厳寒の真冬のある日曜日、ついに逃げ切れないその日はやってきたのでした。
よりによって当番に当たった日は、県大会への出場権を賭けた大切な東播大会。不案内な道で万が一事故を起こしたり道に迷ったりしては大変です。
くれぐれも試合に出るレギュラーの子は乗せないでね、と息子に念を押し、いざ出発、とバックミラーを覗き見れば、後部座席に居並んでまっすぐこちらを見返す面々は皆レギュラー。補欠は助手席の息子のみです。
お歴々を乗せた車は、生まれて初めて耳にするような見知らぬ土地を目指して、日の出前の闇の中をまさに手探りで進んだのでした。
車中の息子は、皆のお気に入りのCDを流したり、おやつを配ったり、君はマネージャーか、と聞きたくなるほどの献身ぶり。にもかかわらず、後部座席のかたくななまでの無反応は、私たち親子の心を虚しくします。
きっとレギュラーの子は緊張しているのだろうとの想像は、半分当たりで半分はずれ。彼らは揃って車酔いに悩む少年だったのでした。
車に弱いメンバーが、それと知って故意に揺さぶったりするいたずら者を避け、示し合わせてうちの車に乗り込んだようです。
皆それぞれに苦労を抱えてかわいそうにと思う一方で、よもや途中で吐いたりしないだろうなとそれが心配で、小心者の私は運転にも集中できないのでした。
車酔いもいよいよピークに達するかと思われた頃、濃い霧を透かして薄日に光る体育館の屋根がようやく見えてきました。
目的地に無事到着したのが朝の7時半。
私は1時間半のドライブでその日1日分のエネルギーを使い果たした気分でしたが、子供たちにとっての長い1日はこれから始まるのです。
顧問の先生は、会場到着から試合開始までのいっ時だに無駄にはしません。
荷物を降ろすやいなや走り込み、体育館へ入るやいなやスパイクとレシーブの練習、そして補欠は球拾いです。
その間、当番の父母は、差し入れのジュースやお菓子を運び入れ、寒々とした体育館の片隅にシートを広げて応援場所を確保します。
すでに大役を果たした気になっていた私も、さすがにその頃には父母にとってもこれからが本番であることに気づくのでした。
こんな車出しが、いったいこれまでに何度あったことでしょう。そのたび協力する父母はだいたい決まっていました。キャプテンや副キャプテンのお母さんを中心とするレギュラー陣のお母さん方です。
早起きの辛さと厳しい寒さ、そして他人の子を乗せる責任の重さに、これまでずっと他人任せでろくな感謝もしてこなかったことに、私は少し反省したのでした。
第1試合に負ければそれでおしまい、勝てば午後まで。底冷えのする片田舎の体育館で、子供たちの勝負はいよいよ始まりの時を告げました。
学校1ハードな男子バレーボール部の活動は、部員の成長とともにコーチの数も増えて、ますます厳しさに磨きがかかってきました。
週末ともなると、公式試合か、あるいは適当な練習相手を求めて各地へ遠征します。
そして厄介なことに、この遠征の送り迎えには部員の父母が交代で車を出さなければなりません。
これまで仕事だ、病気だとさんざん逃げ回ってきた車出しですが、厳寒の真冬のある日曜日、ついに逃げ切れないその日はやってきたのでした。
よりによって当番に当たった日は、県大会への出場権を賭けた大切な東播大会。不案内な道で万が一事故を起こしたり道に迷ったりしては大変です。
くれぐれも試合に出るレギュラーの子は乗せないでね、と息子に念を押し、いざ出発、とバックミラーを覗き見れば、後部座席に居並んでまっすぐこちらを見返す面々は皆レギュラー。補欠は助手席の息子のみです。
お歴々を乗せた車は、生まれて初めて耳にするような見知らぬ土地を目指して、日の出前の闇の中をまさに手探りで進んだのでした。
車中の息子は、皆のお気に入りのCDを流したり、おやつを配ったり、君はマネージャーか、と聞きたくなるほどの献身ぶり。にもかかわらず、後部座席のかたくななまでの無反応は、私たち親子の心を虚しくします。
きっとレギュラーの子は緊張しているのだろうとの想像は、半分当たりで半分はずれ。彼らは揃って車酔いに悩む少年だったのでした。
車に弱いメンバーが、それと知って故意に揺さぶったりするいたずら者を避け、示し合わせてうちの車に乗り込んだようです。
皆それぞれに苦労を抱えてかわいそうにと思う一方で、よもや途中で吐いたりしないだろうなとそれが心配で、小心者の私は運転にも集中できないのでした。
車酔いもいよいよピークに達するかと思われた頃、濃い霧を透かして薄日に光る体育館の屋根がようやく見えてきました。
目的地に無事到着したのが朝の7時半。
私は1時間半のドライブでその日1日分のエネルギーを使い果たした気分でしたが、子供たちにとっての長い1日はこれから始まるのです。
顧問の先生は、会場到着から試合開始までのいっ時だに無駄にはしません。
荷物を降ろすやいなや走り込み、体育館へ入るやいなやスパイクとレシーブの練習、そして補欠は球拾いです。
その間、当番の父母は、差し入れのジュースやお菓子を運び入れ、寒々とした体育館の片隅にシートを広げて応援場所を確保します。
すでに大役を果たした気になっていた私も、さすがにその頃には父母にとってもこれからが本番であることに気づくのでした。
こんな車出しが、いったいこれまでに何度あったことでしょう。そのたび協力する父母はだいたい決まっていました。キャプテンや副キャプテンのお母さんを中心とするレギュラー陣のお母さん方です。
早起きの辛さと厳しい寒さ、そして他人の子を乗せる責任の重さに、これまでずっと他人任せでろくな感謝もしてこなかったことに、私は少し反省したのでした。
第1試合に負ければそれでおしまい、勝てば午後まで。底冷えのする片田舎の体育館で、子供たちの勝負はいよいよ始まりの時を告げました。
…つづく
2009-05-24 15:02
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