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15.合唱コンクール [中学生時代]

 11月の文化祭シーズンが近づくと、中学生時代の合唱コンクールを思い出します。
 「岬は叫ぶ~、岬は叫ぶ~♪」と、まさに叫ぶような歌い出しで始まる合唱曲は、学年優勝を果たしたこともあって極めて印象深く、まるでソプラノ歌手のようだった友人の美声とともに深く記憶に残っています。
 常に眉間にシワを刻み、出席簿で生徒の頭を叩いていた厳格な担任も、この日ばかりはにこやかに生徒たちを労ってくれました。
 合唱コンクールは、先生方の生徒指導に対する結果発表の場でもあったのです。

 あれから20数年の月日が流れ、また土地も変わって迎えた息子の合唱コンクール。
 先生方の力の入れようは昔以上でした。

 クラスごとに課題曲と自由曲の2曲を発表し、各学年9クラス中2クラスに優秀賞が与えられます。

 息子たちの自由曲は男性歌手が歌うポップスで、合唱にはどうかと思うような曲でしたが、それでも女子が高音部、男子が低音部に分かれて練習は始まりました。
 
 音楽の時間に限らず、担任の指導の下、早朝や放課後にも行われるようになった練習は、次第にその厳しさを増していきまます。
 ある時は生徒を褒めたたえ、ある時は激しく叱咤し、またある時は感情を抑えきれず涙するほどに、担任の先生は全身全霊で彼らを指導していました。

 男子だけが残されて猛特訓を受ける日もありました。
 この時期は、変声期のため思うように声が出せない男子もいます。

 先生は当初1人ひとりに注意を与えていたようですが、いよいよコンクールの日が迫ってくると、まだ変声期に至らず伸びやかな発声が可能な男子3人を選んでカセットテープを手渡しました。
 その中には息子も含まれていました。
 テープから流れる指1本で弾いたような低音部のピアノの旋律が、せめて君たちだけでもしっかり練習して他の生徒を引っ張ってくれ、という先生の切なる思いを運んでくるようでした。

 そしてコンクール当日、その先生の思いが伝わり過ぎたか、息子たち3人がメインになって歌う低音部は女子の主旋律をもかき消して、体育館中に響き渡りました。
 誰も彼らの熱意を止めることはできませんでした。
 愕然とする先生をたいそう気の毒に思いつつ、私はこみ上げる笑いと戦っていました。

 しかし、学年通信で生徒たちが綴った合唱コンクールの感想を目にして、今度は私が愕然とする番でした。
 「ステージへの昇り降りが整然とできた」
 「肩幅に足が開いて姿勢よく歌えてよかった」
 「他のクラスの発表をちゃんと自分の席で聞けた」

 これが歌に対する感想でしょうか。
 なぜ歌うことを楽しまずして生徒までがここまで行儀にこだわるのか…。

 しかし、そのやむを得ぬ理由は、昨今の中学生事情にあるのかもしれません。

 1年生はまだ素直でかわいいものですが、3年生の中には、何人もの先生の監視がついてなお、集団行動を大幅にはずれてコンクールの進行を妨害する輩があちらこちらに見られるのです。
 その姿を目の当たりにすると、彼らをステージに整列させて最後まで歌わせることがとにかく一大事業で、歌の出来などたいした問題ではないように思えてきます。
 合唱コンクールはやはり行儀のコンテストでもある訳です。

 息子が3年生になった時、父母席で再び気楽に笑いころげていられるように、勉強はともかく、せめて他人に不快な思いをさせない人間に育てようと、あらためて心に誓った日でありました。

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☆”マイクいらず”の大声が特徴の息子、カラオケに行くと別の部屋からわざわざお客さんが覗きに来たもんです。あれは相当うるさかったからなんでしょうねぇ。


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