カリフォルニアでの運転免許取得~その3~ [番外編]
自動車運転免許の実技試験に2度の敗退を喫した私は、臥薪嘗胆の末、ついに3度目の試験日を迎えたのでした。
この日は待ち時間もわずかで体調も万全、心も新たに試験官のおいでを待ちます。
そんな中、颯爽とやって来たのは、2度目の試験で私の危険な運転に怒り心頭、車が揺れるほどに激しくドアを閉めて去って行った、かの試験官でした。
(勘弁してよ!)と思ったのは、しかし私だけではないらしく、目が合うなり、
「組み合わせをチェンジした方がお互いのためだ」
と言い放ったのは、彼女の方でした。
おかげでその日私の担当となったのは、それまでの試験官とはまったく別のタイプの実に穏やかな女性でした。
とにかくその冷酷な態度は日本の教習所の教官以上と噂に名高い試験官たちの中で、3度目にして彼女のような人間味のある試験官に当たったのはラッキーなことでした。
今回の実技試験に落ちたらまた学科試験からやり直しという崖っぷちに立つ私にとって、
「さあ、リラックスしてベストを尽くしましょう」
という彼女の第一声は天使の声。引きつった体からも力が抜けて、車はスムースに発進します。
好調な滑り出しでやって来た大通りの交差点、右折の指示が出されました。
信号は赤。
この国では、安全が確認できれば赤でも右折はできることになっています。
大通りの左右を確認すると、車は1台も見当たりません。後続の車は”早く行け”とばかりにクラクションを鳴らしてきます。
ところが、私の右前方には自転車のおじさんがいて、その体勢からは、信号が青になったら即刻ダッシュするつもりであることがひしひしと伝わってきます。
後ろのクラクションに負けてここで無理に右折すれば、おじさんの自転車と接触するかもしれません。試験はそこで終わりを告げるでしょう。
しかしクラクションは鳴りやまず、信号も赤のまま。
私は”やかましい!”と怒鳴りつけたい気持ちを抑え、後続車に見えるよう、おもむろに手を振ってみました。
その意図を汲んでかクラクションは鳴りやみ、信号が青になるかならないうちに予想通り自転車が猛ダッシュした後には、試験官と顔を見合わせてにっこり微笑む、という理想的な雰囲気が出来上がっていたのでした。
その後もきわめて順調であったことは言うまでもありません。
「おめでとう!」
と合格通知を渡してくれた試験官に、体中で感謝の気持ちを示した後、写真撮影と指紋採取を済ませます。
この年になって再びこのような達成感を味わう機会があろうとは、想像だにしませんでした。
それから2週間後、郵送されて来たカリフォルニア州の運転免許証は、本来の車の運転のみならず、カードや小切手を使う際、あるいは預金を下ろす際の身分証明に、また酒類購入時の年齢証明にと大活躍、苦労して取得した価値は十分にあったのでした。
そして帰国後、ここ明石でも免許証の活躍の場を作るべく、私たちは車の購入を真剣に考え始めました。
ところが、車種まで決めてドライブの計画に盛り上がる家族に待ったをかけたのは、頭金にしようと思っていた冬のボーナスの、予想を下回る明細書だったのです。
一気に萎える気持ちが落ち着くのを待って、私は結局もう1台中古自転車を購入しました。
これまで息子と2人、スーパーまで自転車を駆っていた日々に、新たに夫の自転車が加わって、家族3人でサイクリングができるようになったという訳です。
あれほど車を欲しがっていた息子もさして文句も言わず、3台の自転車がもたらすほどほどの幸せに、鼻歌の1つも出てしまう心境のようです。
☆3度目の試験に合格して飲んだビールは、それはそれは美味しかったことを覚えています(ヘンリーなんとかいうアメリカ・ビールでした)。アメリカはビールが安くて、バドワイザー350mL×6本で2ドル99セントなんて日もありましたっけ。
この日は待ち時間もわずかで体調も万全、心も新たに試験官のおいでを待ちます。
そんな中、颯爽とやって来たのは、2度目の試験で私の危険な運転に怒り心頭、車が揺れるほどに激しくドアを閉めて去って行った、かの試験官でした。
(勘弁してよ!)と思ったのは、しかし私だけではないらしく、目が合うなり、
「組み合わせをチェンジした方がお互いのためだ」
と言い放ったのは、彼女の方でした。
おかげでその日私の担当となったのは、それまでの試験官とはまったく別のタイプの実に穏やかな女性でした。
とにかくその冷酷な態度は日本の教習所の教官以上と噂に名高い試験官たちの中で、3度目にして彼女のような人間味のある試験官に当たったのはラッキーなことでした。
今回の実技試験に落ちたらまた学科試験からやり直しという崖っぷちに立つ私にとって、
「さあ、リラックスしてベストを尽くしましょう」
という彼女の第一声は天使の声。引きつった体からも力が抜けて、車はスムースに発進します。
好調な滑り出しでやって来た大通りの交差点、右折の指示が出されました。
信号は赤。
この国では、安全が確認できれば赤でも右折はできることになっています。
大通りの左右を確認すると、車は1台も見当たりません。後続の車は”早く行け”とばかりにクラクションを鳴らしてきます。
ところが、私の右前方には自転車のおじさんがいて、その体勢からは、信号が青になったら即刻ダッシュするつもりであることがひしひしと伝わってきます。
後ろのクラクションに負けてここで無理に右折すれば、おじさんの自転車と接触するかもしれません。試験はそこで終わりを告げるでしょう。
しかしクラクションは鳴りやまず、信号も赤のまま。
私は”やかましい!”と怒鳴りつけたい気持ちを抑え、後続車に見えるよう、おもむろに手を振ってみました。
その意図を汲んでかクラクションは鳴りやみ、信号が青になるかならないうちに予想通り自転車が猛ダッシュした後には、試験官と顔を見合わせてにっこり微笑む、という理想的な雰囲気が出来上がっていたのでした。
その後もきわめて順調であったことは言うまでもありません。
「おめでとう!」
と合格通知を渡してくれた試験官に、体中で感謝の気持ちを示した後、写真撮影と指紋採取を済ませます。
この年になって再びこのような達成感を味わう機会があろうとは、想像だにしませんでした。
それから2週間後、郵送されて来たカリフォルニア州の運転免許証は、本来の車の運転のみならず、カードや小切手を使う際、あるいは預金を下ろす際の身分証明に、また酒類購入時の年齢証明にと大活躍、苦労して取得した価値は十分にあったのでした。
そして帰国後、ここ明石でも免許証の活躍の場を作るべく、私たちは車の購入を真剣に考え始めました。
ところが、車種まで決めてドライブの計画に盛り上がる家族に待ったをかけたのは、頭金にしようと思っていた冬のボーナスの、予想を下回る明細書だったのです。
一気に萎える気持ちが落ち着くのを待って、私は結局もう1台中古自転車を購入しました。
これまで息子と2人、スーパーまで自転車を駆っていた日々に、新たに夫の自転車が加わって、家族3人でサイクリングができるようになったという訳です。
あれほど車を欲しがっていた息子もさして文句も言わず、3台の自転車がもたらすほどほどの幸せに、鼻歌の1つも出てしまう心境のようです。
☆3度目の試験に合格して飲んだビールは、それはそれは美味しかったことを覚えています(ヘンリーなんとかいうアメリカ・ビールでした)。アメリカはビールが安くて、バドワイザー350mL×6本で2ドル99セントなんて日もありましたっけ。
2008-09-20 14:07
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コメント(2)
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酒類購入時の年齢証明・・・には大活躍!だよね。
しかし、本当に実技試験のことをほとんど覚えていない私って・・?
取得に苦労はしなかったかも?ではあるのですが、
自分の頭が心配になってくるのであった。
アメリカのビール、懐かしいですね。
いろいろありましたね。日本のビールも程よいサイズで売ってたし。
Trader Joe'sには随分お世話になったな~~。
私は今も、出稼ぎ先でSierra Nevada Pale Aleを見つけると、
必ず購入(または注文)しております。うふっ!
by El Molino (2008-10-05 17:01)
☆El Molinoさん、
おお!Trader Joe's、懐かしい~!ワインも美味しいのが各種ありましたよね。
あちらではしょっちゅうパーティやりましたね~。みんな比較的近所に住んでたってのもありますが、アパートの部屋も広かったし、飲み物や食材も安かったし、雑用が少なかったし、いろいろな条件が揃ってましたね。
よく飲んだな~(笑)
by Duarte (2008-10-05 17:49)