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8.夏休みの宿題 [小学生時代]

 ヒマワリが一気に背丈を伸ばし、朝から蝉の鳴き声が聞こえると、私の大好きな夏も本番です。

 夏がいちばん好きなのは、子供時代の夏休みの思い出が格別心に残っているからです。
 家族で海水浴に出かけたり、普段は会えない従姉弟と祖母の家で遊んだり、盆踊りの帰りにかき氷を食べたり…。そんなささいな思い出が”夏”という言葉と共に記憶されて、心の中に懐かしく幸せな空間を作っています。

 息子も夏休みには特別の思い入れがあるようです。
 アメリカでは3ヵ月という長すぎる夏休みの間、結局毎日一緒に職場へ連れて行き、時には仕事の手伝いなどさせたりして、思い出らしい思い出もないはずですが、今年迎える日本の夏休みの短さを嘆き、アメリカの夏休みを懐かしがるところをみると、彼なりにアメリカの夏休みを満喫していたのかもしれません。何よりアメリカでは宿題がなかったことが、彼にとって最大の幸せでした。

 日本の学校の夏休み、その宿題の多さには驚くばかりです。
 休み前の懇談会で、
「この学校では夏休み用の宿題帳はありません。」
という先生の第一声に喜んだのも束の間、
「その代わり、毎日算数ドリルと漢字練習をそれぞれ1ページと15分間の運動、読書感想文1編、図画工作1作品、1学期の復習に加えて自由研究をやってもらいます」
と続く説明に、これを知ったら気を失うであろう息子の姿を思い浮かべます。

 やはり日本の夏休みはこうであったかと、懐かしく幸せなはずの思い出の裏側を辿れば、夏休み最終日になって、泣きじゃくる弟の宿題を母と手伝った記憶が蘇ります。
 私は逆に、嫌なことは先に済ませて後で楽しむ方だったので、最終日はいつも余裕で迎えていました。姉弟でもこのように性格が違うわけですが、息子の場合ははたしてどちらのタイプでしょうか。
 
 息子は最初、私に似ていました。
 学校で夏休みの宿題の説明を受けたその日から算数ドリルを開始した息子は、休み前には全ドリルを制覇し、読書感想文のための本を1冊読み切り、意気揚々と夏休みを迎えたのです。
 ところが、そこで彼は早くも息切れを起こしてしまいました。
 せっかく読んだ本も感想文にならないまま、記憶は薄れるばかりです。

 その上、父の看病で帰省する私に随行し、彼はその後の休みの大半を松本で過ごすことになったのでした。

 この松本で、息子は一つ目標を決めました。
 自転車に乗ることです。
 私が何度か教えて、そのたびに一生無理かと思われた自転車ですが、実家の母と弟の懇切丁寧な指導により、ある日突然、見事に乗りこなすことができるようになりました。
 必死でバランスを保とうとする様が体中に表れているにもかかわらず、余裕があるところを見せようと口笛など吹きながら走る姿を、しばらくは笑いをこらえて眺めていましたが、一旦習得すると、自転車歴何十年の私とも技術的に大差なく、これでまた一つ息子に尊敬されることが減って、気分は複雑です。

 練習の仕上げに、父の入院先の病院まで、息子は川沿いの道を自転車で走りました。 
 恐れを知らぬ初心者の後を走ってついて行った私は、激しい動悸に襲われて顔面蒼白。”これでまた心配の種が増えたね”と言いたげな父を相手に、息子の自慢話は止まることなく続くのでした。

 こうして目標を一つ達成した息子は、それですっかり満足してしまい、夏休みの宿題は凍結状態。
 その行く末は、かつての弟の地獄の最終日の再現へと向かいつつあります。

はんかち1.jpg

ハンカチの花


☆息子の大学は、夏休みに大量の宿題を出します。大学生になってまで、夏休みの宿題に苦しむ息子です(笑)。

タグ:夏休み 宿題
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