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5.子供会の遠足 [小学生時代]

 ベランダに置いた鉢植えのイチジクにたっぷり水をやり、留守番の犬に声をかけて、今日は地区の子供会のメインイベントである春の遠足です。
 
 この町内は、子供総数124名という今時珍しい大所帯で、これに役員のお母さん9名を加え、バス2台で姫路の北西に拡がる播磨科学公園都市へと向かったのでした。
 
 これだけの人数を予定通りに行動させるのは至難の技で、バスに乗り込む時点からすでにトラブル続出。
 やっとの思いで出発すれば、騒ぐ子あり、立ち上がる子あり、窓から顔を出す子あり、そのうち酔う子ありで、一時も気を抜けません。役員もこの春結成されたばかりの新米揃いのため、重いプレッシャーも手伝ってその引率は要領を得ず、大騒ぎのまま目的地へ到着となったのでした。

 幼稚園児に毛が生えたような低学年の子は、特に手がかかるに違いないと心配していた役員一同。ところが、彼らは何をするにも私たちお母さんの許可を仰ぎ、常に目の届く範囲で行動してくれるので、かえって安心でした。

 むしろ厄介だったのは、高学年の男子です。
 うちの息子を含むそのグループは、勝手に動き回って全体のペースを乱し、注意すれば屁理屈をこね、しまいには広い公園の片隅に孤立してカードゲームなど始める始末。
 自分の子供だけであれば、さっさと一撃くらわせて軌道修正しているところですが、仲間が大勢いる場合、彼らのパワーは倍増し、修正不可能な群れと化してしまいます。

 何かというと教師の体罰が新聞沙汰になり、非難されることが多い昨今ですが、実際に傍若無人な子供たちの群れを引率する、といった経験をしてみると、一発殴りたくなる気持ちもわかるというものです。

 ちょうど今の息子と同じ頃、私は学校の音楽の先生から殴られたことがありました。
 6年生が全員揃って行う音楽会の学年練習中の出来事で、おしゃべりしていたか何かの理由で生徒のほとんどが殴られたはずです。ところが、先生の手もさぞ痛かったろうと心配こそすれ、非難する者は、生徒の中にも父母の中にも一人もいませんでした。
 体罰の記事を目にするたびについ思い出してしまう光景ですが、あれは先生が先生でいられた幸福な時代の象徴的な出来事に思えてなりません。

 今回初めて引率を体験した私は、勝手気ままに行動する子供たちにハラハラしながらも、一人ずつパシパシとひっぱたいて歩く自分の姿はあくまで想像に止め、結局は私の子育ての基本方針である『生命に関わることをしない限りは放っておこう』という、ものぐさな態度を貫くことにしたのでした。
 とりあえず全員無事に帰宅することができたのも、子供たちの身を案じて叫び続けた他の役員さんのおかげです。

 子供たちが十分楽しめたかどうかは二の次でしたが、後日回収したアンケートには、とても楽しかった、という声が溢れていました。
 息子によると”うちのお母さんがいちばん優しいと評判だった”とのこと。
 何も言わずにただ眺めていただけなのですから、優しいも何もあったものではありません。熱心に引率業務を遂行した他の役員さんが”うるさいおばさん”と評されるのは気の毒です。

 しかし、さすが6年生ともなると、人の気持ちというものがわかってきます。
 「でもみんな子供が心配だから怒るんだよね。お母さんは心配じゃなかったの?」
 「だって、ここは日本だもの」

 アメリカで遠足の付き添いなどした日には、それこそ声が嗄れるほど絶叫していたに違いありません。
ジャカランタ.jpg
 ☆C工科大学のジャカランタ(本文とは無関係でございますが…) 今の日本は危険だらけで気が抜けません。

タグ:子供会 遠足
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