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3.犬との再会 [小学生時代]

 1月も終わりのある日、アメリカ滞在中友人に預けていた犬を、1人で札幌まで引き取りに行くことになりました。
 実に3年ぶりの再会です。

 この明石に居を構えた大きな理由は、犬が飼える手頃なマンションがあったからであり、帰国後犬を引き取ることは、私たち家族にとっても札幌の友人にとっても、かねてからの約束事だったのです。

 ところが、札幌行きが近づくにつれ、積極的なのは息子1人という雰囲気ができつつありました。

 別れた時はまだまだ誰にでも順応可能な子犬だった訳ですが、今ではもう立派な成犬です。いくら駄犬とはいえ、今の飼主と他人の区別ぐらいは十分につくでしょう。子犬時代にほんの数ヵ月間生活を共にした人間のことなど、すっかり忘れているかもしれません。
 しかも私たちが引き取ろうとしている犬は、夫が拾ってきた2匹の雑種犬のうち、渡米前の里親探しで最後まで貰い手がつかなかった、『ハナ』という名の大喰らいのくせに病気がちな雌犬なのです。最終的に友人が世話を引き受けてくれなければ、まだ住む所も決まっていないアメリカで、ハナも私たちももっと苦労するはめになったでしょう。

 大いなる不安とわずかな期待を持って再会を果たした問題の犬・ハナは、見る影もなく巨大化し、警戒心の塊となって、元飼主たる私を出迎えたのでした。

 餌を与えて機嫌をとろうにも、翌朝の飛行機に乗せるため、すでに彼女は絶食中。
 結局何の対策をとることもできず、私とハナはお互い気まずい雰囲気を漂わせたまま、新千歳空港へと向かったのでした。
 
 搭乗口では、抵抗することなく素直に犬用のケージに入り、そこで人間とはいったんお別れです。
 飛行中、ハナは何をしているものやら、後ろの動物室からは何の吠え声も聞こえません。

 大阪空港に到着して再び引き渡されたケージの隅に、ハナは大人しく座っていました。
 ところが、「ハナちゃん!」と呼びかけると、ハナは突然何かを感じ取ったかのように、懸命にシッポを振って応えてくれたのです。私はハナとの絆の復活を確信しました。
 さあ、一緒に家へ帰ろう。

 その日から、犬を仲間に加えた新しい生活が始まりました。
 マンションの室内を自由に通行させていますが、普段は玄関で番犬としての任務を遂行しています。
 初日から家族の足音だけは判別できるようになり、家族以外の来訪は吠えて知らせます。しかし、最近では自分の勤務時間を決めたようで、夜8時を過ぎると翌朝6時までは誰が来ても吠えません。
 
 日々欠かすことのできない散歩のおかげで、多くの犬仲間もできました。
 ハナの1番のお気に入りは、茶パツでロン毛の美形犬メルシー、2番目は、トメという呼び名にふさわしい顔つきのおっとりした白犬、次に、黒くもないのにクロと呼ばれているお調子者の若齢犬。私が彼らに順位をつけるとしても、やはりハナと同じであったろうと思います。

 観察しているとおもしろいことに、血統書付きの大型犬はやはり大型犬同士輪を作り、小型の室内犬は室内犬で、また名もない雑種犬は雑種犬で、それぞれ遊び仲間ができているのです。
 これは飼主の意向によるものか、あるいは犬の意思によるものか…。体型や年齢、はたまた経済的な背景など似通った犬と遊ばせる方が、飼主として安心できることは確かであり、そこには子どもに対する親の意図と同質の感覚が、より極端な形で存在していることに気づきます。

 一人息子が親離れの片鱗を見せつつある昨今、犬で再び親の気持ちを堪能しようとする目論見は、どうやら夫の野望とも一致して、今後さらに勢いを増すことでしょう。

はな0706.jpg


☆この時3才だったハナも、はや13才。姉妹犬・ノグは里親のもとで元気にしてるでしょうか。 ノグとハナの由来は、野グソ鼻クソという、そんな命名をしたのは当時小学2年生だった息子です。[ふらふら]


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あつこ

え~と・・・Duarteさん・・・
めっちゃええ話しやん~って最後まで読んで・・・
野ぐそはなくそって!!そらないわ~(笑)
小学二年生だったご子息さんがつけられたのなら、仕方ないですわね。(* ̄m ̄)プッ

けど、わんこってほんと賢いんですね~
長いこと別れてた飼い主を思い出したってことでしょう?
ん~・・・そこらへんが、やっぱりにゃんことは違うところなんでしょうか・・・にゃんこも覚えてくれるんでしょうか・・・
まあ、どっちにせよ、ほんと、いいお話し。
今もご健在で13歳?さらに長生きしてほしいですね、ハナちゃん!
by あつこ (2008-07-06 17:37) 

Goldenwest

おお!アメリカにいた頃、Duarteさんの息子さんから、お名前だけは聞いていましたよ、「ハナちゃん」。
ご友人に預けられたときは、まだ子犬だったんですね。
そんな小さい頃に別れたのに、覚えててくれたんですね。うう・・・。

いいお話だわ~と感激したのに、最後の命名の由来を見て、ずっこけてしまいました。「ハナちゃん」の方が、まだ救われる・・・。「ノグちゃん」て!

うちの犬は、他の犬は一切ダメ。どんな動物にも音にも吠えまくり。。。
犬のくせに鼻づまりで、嗅覚もいかれていますが、一度食べた食べ物の臭いだけは、どんなに年月がたっても、しっかり覚えている様子。
彼が能力を使うのは、食べ物に関してだけなのか。。。
by Goldenwest (2008-07-06 23:57) 

Duarte

あつこさん、すぐに里親が決まったノグに比べて、ハナは生米を食べたり首輪を噛みちぎったりお手もできなかったり、だいぶ残念なワンコでしたが、小さい頃から「ハナ!」と呼ぶと「うん?」って具合に見上げるのがそりゃもうかわいくて~!(って、ここでも親ばか)
にゃんこもあつこさんのブログにあった郵便屋にゃんこなどは、昔の飼主のことも覚えていたんですかね~。
by Duarte (2008-07-07 22:35) 

Duarte

Goldenwestさん、息子は渡米の時、ハナと別れるのが一番辛かったみたいです。3年ぶりの息子をハナはよ~く覚えてました。
Goldenwestさんとこの子は鼻づまりなんですか、お気の毒に。物音にもよく吠える子は、一軒家ではとくに番犬になっていいですね。ハナは若い頃こそ一声二声吠えもしましたが、ここ数年誰もハナの鳴き声を聞いた者はいません。無口です。
by Duarte (2008-07-07 22:41) 

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