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21.生徒会長選~その1~ [中学生時代]

 毎年12月に入ると、息子たちの中学校では次年度の生徒会長を決める選挙が行われます。

 9クラスある2年生の中から、まずは先生方がこれぞと思う生徒をピックアップして本人に打診するところから戦いは始まります。
 この中学校は部活動に異常なほどの力を注いでいますが、生徒会執行部の活動たるや、その部活動を凌ぐ忙しさ。執行部の一員に選ばれた日には部活動どころか勉強する暇もないという状況に、先生から声をかけられた生徒たちは悩み抜きます。

 結局今年正式に立候補を表明したのは、男女2名ずつの計4名でした。
 そして驚くべきことに、その中に息子の名前があったのでした。

 立候補を出したクラスでは、クラスこぞって応援体勢に入ります。
 近頃息子のクラスでは、担任の先生に反抗する生徒が目立ち、文化祭の合唱コンクールでも大方の生徒はまったくやる気なし。舞台の上でおしゃべりはするわ、鏡はのぞくわ、ガムは噛むわの悪行三昧。
 聞こえてくるのはほんの2、3人の男子の歌声のみで、観覧席にいる父母の誰もが「大丈夫か、このクラス…」と思ったという崩壊ぶりです。

 ところが、立候補者を応援するに至って、クラスには活気と団結力が見事に再生されたのでした。

 ポスター、たすき、鉢巻などの製作係、選挙演説をサポートする係など次々決定する中、最も重要な役割を担う推薦責任者には、ガキ大将という呼び名がぴったりの柔道部の猛者が名乗りを挙げてくれました。
 
 選挙戦の最後を飾る応援演説という大役もこなさなければならないこの推薦責任者には、担任の先生としては別の雄弁な子を考えていたようで、息子に「ほんとにアイツでいいのか?」と聞いたそうですが、それはそもそも息子の立候補に対して発せられるべき疑問ではなかったでしょうか。

 まあそれはそれとして、「オマエが立候補するならオレが応援してやる!」という義侠心に満ちた猛者の言葉に、「オマエはやめとけ」とはさすがに誰も言えず、こうして熱意あふれる応援団に支えられて、激しい選挙戦の火ぶたは切って落とされたのでした。

 1週間の選挙運動期間中、吐く息も白い早朝から、4人の立候補者は正門の前に立って自己アピールを繰り返しました。
 まるで声の大きさと立ち位置の高さで勝負が決まるとでもいうように、声はやがて絶叫となり、お立ち台は椅子から机へとグレードアップしていきました。

 そして何日目かの朝、推薦責任者の猛者は、息子をもっと目立たせようと、遠く離れた2階の教室からたった1人で巨大な教卓を運んで来たのでした。
 柔道部の彼を推薦責任者にしてよかったとその時初めて思った、そう息子は語りました。
 しかし演説後、2人でその重すぎる教卓を抱えて階段を上がるはめになった時、再び後悔したと…。
 それは、教卓の汚れた脚をじっと見ていたという先生にしても同じだったでしょう。

 立候補者の活動は、学内だけでは終わりません。
 家に帰ればまた翌日のアピールの文句を考え、声を張り上げて練習し、昼の校内放送のための原稿作りに励みます。
 つい最近まで、無理に勉強させると必ず熱を出すほどの勉強嫌いであった息子が、生徒会長に立候補したことによって、夜更けまで机に向かいながらますます元気なのです。
 まだ発展途上のこの時期、本人の努力次第でいかようにも変わり得ることを目の当たりにして、もしかして当選するのではないかと、親バカにも拍車がかかるのでした。

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タグ:生徒会長選
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