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20.姑志願 [中学生時代]

 2学期の中間テストを終えた息子たちは、10月末の文化祭に向けて歌の練習に忙しい毎日です。

 日が短くなった最近では、すっかり暗くなってから帰宅する息子ですが、ここのところその第一声が「腹減った」から「むかつく!」の連発に変わりました。

 男子中学生がむかつく出来事といえば、まあせいぜい先生に怒られたか、あるいは女子にバカにされたか、そんなところだろうと思って聞いてみると、息子の立腹の原因は、彼の精神年齢では理解不能であろう一女子の行動にありました。

 同じクラスのある女子が、休み時間や昼食の時間になると息子の机を占領するのだそうです。
 他の男子の席には近寄らないのに、息子が一瞬でも席をはずそうものなら、遠く離れた自分の席からとんで来ては彼の椅子でくつろぐのだと…。そして必ず机にいたずら書きを残していく、というその話に、私はすかさずある種の感情を読み取りました。

 身内の欲目を十二分に差し引いても、件(くだん)の女子の興味が息子にあるのは明白です。
 それを当の本人は「まったくあの女は何考えてんだか」という訳です。

 私たちの中学生時代も、恋愛だ何だと大騒ぎするのはもっぱら女子で、騒ぎの対象である男子はといえば、恋する感情などこの先10年は未発達だろうと思われるような子供ばかりでした。
 今時の中学生は男子と言えど心も体も一昔前よりずっと大人ではありますが、日々部活動に明け暮れる息子たちのような体育会系男子中学生は、いまだに私たちの時代の中学生気質を持っています。

 ここで息子に私の見解を聞かせて下手に意識させるようなことがあってはならないので、とりあえず「面白い女の子だねえ」とコメントしておいて、クラス写真で彼女をチェックすることにしました。

 なかなかの美形…。
 自分の美しさを自覚しきったその強いカメラ目線に不覚にもたじろいだ私は、思わず「この子には気をつけなさいよ!」と叫んでいたのでした。

 私には、40才を目前に控えていまだ独身の弟がいます。
 両親揃って大病を患って以来、「もう誰とでもいいから早く結婚してほしい」というのが母の口癖です。

 自分がきつい姑で大変苦労した母は、「私は絶対あんな意地悪はしない。お嫁さんが来たらかわいがってやる」と宣言してはばかりません。
 そういう時、家族は心の中で「無理だな…」と思いますが、誰も口には出しません。
 しかし、母には私という娘もいて、娘を嫁がせる気持ちも経験済みですから、たしかに姑根性をある程度セーブすることも可能でしょう。

 私のように息子しかいない場合、とりわけそれが一人っ子である場合には、そうもいきません。
 意識せずとも最強の姑になること間違いなしです。

 女子のちょっかいが意味する微妙な気持ちにもまったく気づかず、相変わらず単純にむかついているばかりの息子に、「お母さんは将来キミの嫁さんをいびるでしょう」と、まずは不吉な予言をしてやりました。

 しかし、その前に順番としてはやはり小姑の役を経験しておかなければ、と思い至り、ついては優しい姑を目指す母とともに、弟の結婚を強く待ち望む次第です。

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天皇落雁


☆この作文を書いた時から6年あまりの月日が流れた今も、弟は独身を貫いております。


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